(匿名希望 男性 42歳 会社員 東京都)

 

私はリーマンショックによって500万円弱の貯金を失いました。

その損失を取り戻すために投資信託を何度か買い換えました。アメリカ・日本・欧州といった先進国がダメなら新興国だと考え、インド、ベトナム、ブラジルといった国の株式を対象とした投資信託を主に買いました。

しかし購入した投資信託は軒並み下がり、購入手数料を含めてさらに200万円近くを失いました。

新興国の投資信託から手を引いた私は、次の投資先を探していました。

日本株は相変わらずダメで、日経平均は8千円から1万円の間を行ったり来たりでした。

私が生まれて初めて投資に参加したのはリーマンショックより2年前の2007年です。その頃の日経平均は1万6千円を超えていました。8千円台の日経平均株価を毎日見ていると、あの頃の日経平均株価が夢か幻のように思えました。

そして私は、2007年をピークとした日経平均株価の高値は小バブルだったのかもしれないと思うようになっていました。本来、日経平均の実力は8千円から1万円程度のものであり、1万5千円を超える値をつけることのほうが不自然なことだと考えるようになったのです。

ところが2013年に入ったころ、日経平均が上昇し始めました。それまで9千円前後をうろうろしていた日経平均が年明けから上昇し始め、3月に入ると1万2千円を超えたのです。

株価上昇の原因は、安倍政権が日銀の総裁に黒田東彦氏を選定したためです。黒田氏は過去の発言で、「日本の景気回復には金融緩和が必要だ」と言ってきた人でした。

その黒田氏が日銀の総裁になりそうだという報道が流れた時点で、市場は大きく反応したのでした。黒田氏は2013年3月28日に日銀の総裁になりました。

しかし私は6年間の投資経験からひとつの法則を学んでいました。

「市場は期待で上げて結果で下げる」

株価が上昇するのは期待感が膨らんでいるうちであり、その期待が思い通りになって実現した時点で材料出尽くしとなり、その後は期待が外れて下げるということです。

期待が膨らみきったところで株を買い、材料出尽くしによる株価下落で大損ばかりをしてきた自分にはそのことが身に染みていたのです。

私はこの瞬間が勝負の時だと思いました。

「金融緩和論者の黒田氏が総裁になったからといって現実はそんなにうまくいくはずがない。いずれ市場は彼に失望をして反動で大きく下げるに違いない。」

そう踏んだのでした。

「下げに賭ける」

そう決めたのでした。

私はそれまでの700万円の損失を一気に取り返すべく、下げに大きく反応する商品を探しました。そして見つけたのが「新光Wベア・日本株オープン」という投資信託です。

゛Wベア “  とはつまり、日経平均の「下げ」に対して「2倍上昇する」ということです。

2013年4月の始め、私は自分の貯金のうち百万円だけを残して残りの1500万円で新光Wベア・日本株オープンを購入しました。購入時の基準価格は9000円程でした。

日経平均が5%下がれば150万円の利益、10%下がれば300万円の利益です。私の700万円の損失額は550万に減り、400万円に減っていくという計算です。

日経平均が9千円程度にまで戻ったころで利益を確定しようと考えていました。

ところが。

私の読みは完全にはずれました。

購入から1週間で日経平均は1万3千円を超え、1ヵ月半後には1万5千円を超えたのです。恐ろしいくらいの急騰でした。

私が購入した新光Wベアの基準価格は5500円を割り込みました。

恐ろしくなった私は完全に狼狽し、投資信託を売却しました。1500万円が920万円になって返ってきました。580万円の損失でした。

それまでの6年間の投資人生で失った額に近い額を、たった1ヵ月半で失ってしまいました。

市場は黒田総裁への期待を失わなかったのでした。日経平均は私の期待に反して上昇し続けたのです。

株価を上げるという一面において、アベノミクスは成功してしまいました。

安倍首相は私から580万円を奪ったのです。

私は安倍晋三を死ぬまで恨み続けます。

 

株価が上昇することが信じられなくなっている大損投資家たち

【ファイナンシャルプランナー浅野】

 

投資をやっている人のうち、人生トータルで利益が出ている人は全体の1割だという統計が存在します。残りの9割の個人投資家は、プラスマイナスゼロか損失を出しているということです。

株で損をし続けている人は、必要以上に市場に対して悲観的な見方をするクセがついてしまっています。株が上がるということが信じられなくなっているのです。

そして「いずれ中国のバブルが崩壊して金融恐慌が起こる」「近いうちに北朝鮮が暴発して市場が荒れる」「日本経済はデフォルトに陥る」といった悲観論が大好きです。

自分が市場で損ばかりしてきたものだから、他の個人投資家にも同じように不幸な目に遭って欲しいのでしょう。

本屋に行くと必ず、「近いうちに日本株が大暴落する」といったことを予言するような本が平積みで並んでいます。平積みになっているということはよく売れるということであり、それを期待している日本人が多いということです。

日本人はどうも不安を煽られるのが好きなようです。世紀末に悪魔の大王が天から降って来ることを期待し、2012年には世界が終わることを期待しました。

このような精神状態が長く続くと、日経平均が上昇し始めても素直に追従できません。「これは一時的なものだ」「すぐに化けの皮がはがれる」「騙されないぞ」と思ってしまうのです。

しかし、投資で利益を出すための基本は「上げ基調に乗る」ということです。上げ基調を信じてそこに乗っていこうという身軽さはとても重要です。アベノミクスによって日本株が上昇し始めた頃に、無心でそこに身を預けられた人は、それなりに利益を得られたでしょう。

ITバブルの崩壊、サブプライムショック、リーマンショック、東日本大震災などで大損を繰り返してきた古参の投資家は、アベノミクスによる日本株の上昇に乗ることができなかったのではないでしょうか。

2007年から2011年にかけて投資をしてきた人は、疑うことばかりが身につき「信じる」ことができない体になってしまっているのです。投稿者の匿名希望さんがアベノミクスの時期に「下げ」に賭けたことは、当時を知る人には気持ちが分かるはずです。

こういう体質から抜け出すには、まずは損失をゼロにすることです。損失がゼロになれば、気持ちも随分と変わって来るものです。