(匿名希望 54歳 男性 会社員 東京都)

 

私が投資信託を購入したのは10年程前のことです。

そのころ、貯めてきたお金が銀行の普通預金に200万円、ネット銀行の定期預金に1500万円ほどありました。

ネット銀行の定期預金の金利は0.4%でしたので、年間に6万円の金利がついていました。

年間6万円と言えばひと月に換算すると5千円です。5千円なんて焼肉屋に1回行けば消えてなくなります。

やはり、5千円ではもの足りませんでした。それだけの金利がついたからといって、おいそれと使う気になれる金額でもありません。

私は「心置きなく使えるお金」が欲しかったのです。会社で働いてもらう給料というのは、私の中では心置きなく使えるお金ではないのです。

21時まで仕事をして、家に帰るのは22時です。そこからシャワーを浴びて晩御飯を食べていたらあっという間に深夜です。くだらない深夜番組を見ながら2時くらいに眠りにつく毎日です。

私にとって会社の給料というものは、自分の貴重な時間を捧げた対価であり、それを使う時は忍びない気持ちになるのです。そのお金で遊んでいても、どこか虚しいのです。「身を削って働いて得たお金を、よくもまぁこんなにくだらないことに使えるもんだな。」と心のどこかで自問自答してしまうのです。

だから、働いて得る給料以外の収入があるということが、私の人生を豊かにしてくれるという気がするのです。

しかし5千円はあまりにも少ない。5千円では遊べない。

それで始めたのが投資信託でした。定期預金をすべて解約し、その1500万円で投資信託を購入しました。

投資信託の分配金にとても魅力を感じました。私が購入した投資信託は毎月60円の分配金のあるものでした。1500万円分購入した私の銀行口座には、毎月8万円ちょっとのお金が振り込まれるようになりました。

不労所得。分配金は、まさに不労所得でした。働いて得る給料ではない収入。何もしないで入ってくるお金。自分が少し偉くなった気がしました。

私は金遣いが少し荒くなりました。給料以外に8万円の不労所得があるという意識が、気を大きくしました。会社の若手を飲みに誘って、代金を支払ったりしました。

「心置きなく使えるお金」だからこそ、そういうことが可能だったのです。

しかし、私のささやかな栄光は長く続くことはありませんでした。

私が購入してからずっと、投資信託の基準価格は下がり続けました。分配金が目当てだからということで、基準価格の値下がりには眼をつむっていたところもありました。

しかし、5年間で基準価格は購入時の半額にまで下がり、分配金の総額を足したとしても損失額が300万円を超えました。

気が大きくなってお金を無駄遣いしたマイナス分を考えると、損失はもっと大きいと言えるかもしれません。

投資信託なんか買わずに、ネット証券の定期預金に預けていれば、この5年間で30万円の金利がついていたはずです。定期預金のすばらしさに、今さらながら気づかされました。

今はその投資信託は解約しています。しかし定期預金の金利も下がってしまったので、性懲りもなく別の投資信託を購入している私です。今回は分配金の無いタイプで、基準価格の値上がりをじっくりと待つことにしました。とりあえず300万円は取り戻したいと考えています。