(デコポン77 53歳 男性 銀行員 愛媛県)

 

私は地銀に勤めている。その銀行が投資信託の販売に力を入れ始めた頃から、私自身も投資信託を購入するようになった。お客さんに勧める手前、自分も投資信託を購入しておかないとなんだか悪い気がした。

自分で投資信託の購入を真剣に悩むことが、投資信託を理解するのに一番よい方法だと思った。自分が購入した投資信託をお客さんに勧める時は、熱意をもってしゃべることができた。

だから私にとって投資信託を購入することは仕事の一環だった。遊びで投資信託を買っている一般人とは違うという自負を持っていた。

私の勤める銀行では株とFXをすることは行員規程で禁止されているが、投資信託の購入は許されている。許されているどころか当行が扱う投資信託の購入を促される。

つまりは勤め先のお墨付きの元で、私は15年間投資信託を買ってきたのである。

いつも3種類以上の投資信託を同時に持っていた。持っている投資信託のうち見込みのないものを売って損失を確定し、新しく登場した投資信託を買うということを繰り返してきた。

その結果が、15年間で1600万円の損失である。

この15年間のうち、投資信託にとっていい時期も多少はあったが、悪い時期のほうが圧倒的に長かった。100年に一度と呼ばれたリーマンショックに始まる金融危機では、血の気が引くほどに投資信託の基準価格が下がった。

しかし仕事の一環であると割り切って耐えた。

投資信託は株やFX以上に取引手数料が高い。高いものだと3%+消費税を取られる。投資信託を新たに買い替えるごとに、この取引手数料も支払ってきた。

取引手数料は勤務先の銀行には喜ばれただろうから、私は銀行の客としては優等生なのかもしれない。しかし投資家としては落第生そのものである。

そもそも投資信託というものは頻繁に売り買いするものではない。それをやってしまっている時点で不利である。

投資信託を購入することは仕事の一環だと思い込もうとしたことが逆に甘えとなっていたのだろうと思う。

仕事の一環だから、簡単に購入し、簡単に手放し、簡単に損失を確定してきたのかもしれない。もっと真剣に、シビアに、投資信託の内容を見極めて、下がったところで購入するというズル賢さを私は持てなかった。

そんな私がお客さんに投資信託を勧めていたのだから滑稽だ。自分が過去に別の投資信託で損をした話をすることで、お客さんからある種の信頼を得ていた部分もあるのも確かだが。

定年を迎えて銀行を辞めた暁には、今度は本気で自分のための投資を真剣に考えたいと思う。

 

銀行員が勧める投資信託について

【ファイナンシャルプランナー浅野】

 

銀行の本業は顧客から預金を集め、それを企業に貸し出すことで金利を得ることです。

ところが2002年の規制緩和以降、銀行員が投資信託を勧めてくるようになりました。普通口座に200万程度預金しているだけで、銀行から「預金で投資信託を購入しませんか」という勧誘電話がかかってきたりします。

企業は設備投資の必要に迫られなければ、借り入れをしません。景気の拡大過程でなければそれほど設備投資は増えていきません。その結果、銀行にはお金が余ります。

そこで銀行が預金者に投資信託を販売すれば、金庫に余ったお金は消え、販売手数料で利益も得られるというわけです。

投資信託に関しては、銀行は証券会社の販売代理店にすぎません。投資信託を顧客に販売する代わりに証券会社から手数料が入って来る仕組みです。

元本が保証されていない投資信託をお客に勧めるわけですから、銀行員の多くは良心の呵責(かしゃく)を感じていることでしょう。

投資信託で顧客が大損をしたとなればさらに心が痛むことでしょう。投資信託を勧めさえしなければ、その顧客は預金で少ないながらも確実に金利を得ることができたのですから。

銀行員の本分は借り入れを希望する企業の体力を見極め、融資をするかどうかを決めることです。投資信託に関しては全くの門外漢です。

ひとつの銀行が扱う投資信託の種類は100を超えます。彼らがそのひとつひとつについて内容を熟知しているとは到底思えません。

個人投資家が投資信託のことについて詳細に知りたければ、「目論見書」を自分で読み、それでも分からないことはその商品を作った証券会社に直接問い合わせるべきです。そのうえで、その商品を購入する窓口として銀行を選択するのであれば何の問題もありません。

元本を冒すリスクのある投資話なんかに興味は無い、という人は、銀行員が投資信託を勧めてきたとしてもはっきりと断ってください。良心のある銀行員も、断られて内心はホッとしていることでしょう。