【ファイナンシャルプランナー浅野】

 

大損をしている人の多くは、含み損がどんなに膨らんだとしても仙人のごとく堪え忍び、資産の半分以上を侵食されようともひたすら堪える精神力は持っているのです。

そのくせ、購入した株に含み益が出ようものなら、修学旅行前夜の小学生のように落ち着かなくなってソワソワ、ソワソワ。大損に耐えている時の仙人のような精神はどこかに吹き飛んでしまい、早々に売り払ってしまうのです。

しかし、これは仕方のないことかもしれません。

含み損を抱えている時の気持ちは「株価よ元に戻れ」ですが、含み益を抱えている時の気持ちは「株価よ元に戻るな」です。

「元に戻れ」と念じている時は、「購入時の株価に戻る」という明確な目標があるので、待つことができるのです。「元に戻るな」と念じている時は、ゴールが3日後なのか1年後なのか、ひょっとしたら今この瞬間なのか分からないので、落ち着かないのです。

そして、個人投資家が含み益に耐えられない最大の理由は、「利益を喪失してしまう」という恐怖です。

個人投資家の気持ちは釣り人とよく似ています。釣りに出かけて一度もアタリが無くて何も釣れなかった日よりも、海面まで引き上げたのに逃げられた日のほが、精神的なダメージは大きいのです。

手に入れられたはずの利益を取りこぼすことに、人は深くダメージを受けるのです。そのダメージは、含み益の額が膨らめば膨らむほどに増していきます。

投資家が含み損には耐えられ、「含み益」には耐えられないのは、至極自然なことであり、まったくもって非難されるべきことではありません。

つまり人としての感情のみに従って行動をすれば、絶対に大きな利益を得られないのが投資の世界だということです。

「自分はどうして含み損には耐えられるのに含み益には耐えられないのだろうか」などと悩むのは愚の骨頂です。誰だってそうなのです。

プロは「感情に任せて取引をする限り大きな利益を得ることができない」ということがよく分かっています。分かっているからこそ取引のルールを作り、それに従うのです。

ところが素人はというと、なぜか自分の直感を信じたがるのです。「今がこの株価の最高値だ」「ここまで上がったのだからもうそろそろ下がり始めるだろう」という、自分の直観をもって株を売却するのです。

例えばある銘柄の株価が5週間で2倍になったとします。こういう株があったことを知った時に、素人投資家は「あぁ、この株を買っておけばよかったなぁ。」と後悔するのです。

しかし、私はそういう人を一瞬でなだめる言葉を知っています。

「後悔する必要はありませんよ。あなたがその株を買っていたとしても1週間もたたないうちに必ず売却していますから。」

直観で株を保有し続ける限り、株価が200%上昇するまで我慢しつづけられるはずがないのです。

しかしプロは、200%の上昇分は無理だとしても190%の上昇分くらいの利益はきっちりと持っていきます。

プロは我慢しているわけではありません。ルールに従っているだけだなのです。

株価が上昇するにつれ、売却の最低価格ラインを株価マイナス10%に引き上げていくという作業を繰り返しただけなのです。

そこに人としての感情の入り込む余地はありません。小学生レベルの算数の知識と少しのメンテナンスが必要なだけです。

上昇する株の利益を最大限取り込むために必要なのは、感情や直観ではなく、機械的にルールを守るという事です。