(釣り吉 63歳 男性 嘱託 岩手県)

 

2008年のはじめ、サブプライムショックの影響で日本や欧米などの先進国の景気は下降していました。

しかしその一方で、インドや中国やブラジルなどの新興国の成長率は著しく、今後の世界経済の成長を牽引するのはこういった国々だと言われていました。

私はそこに望みを見出しました。「もう時代はアメリカじゃない。新興国だ!中国だ!」と。

私は2008年の4月に、中国株で構成された投資信託『チャイナ龍翔』を500万円分購入しました。

「アメリカがダメだとしても中国が市場を引っ張っていってくれるんだ。時代は中国なんだ。」

そう信じていました。

しかし・・・。

そんな私の考えは甘かったのです。

アメリカ経済がダメになるにつれ、世界経済も鈍化しました。新興国の株価もじりじりと下がって行きました。

『チャイナ龍翔』の基準価格もじわりじわりと下がり続けました。

含み損は日ごとに増えていきました。

2008年の8月には、チャイナ龍翔の含み損は120万円になりました。

結局、アメリカの株価が回復しないことには新興国の株価も回復しないのだということがよく分かりました。株価は世界共通だったのです。

待つしかないと思いました。アメリカの景気が持ち直すまで辛抱強く、3年でも5年でも待ち続けるしかないんだと。

「投資は我慢だ。我慢さえしていれば、下がったものはいずれ上がる。さすがに5年もすればもとの水準に戻るだろう。」

この考えが私の心の支えでした。

しかし、無常にもその日はやってきました。

2008年9月15日。『リーマンブラザーズ破綻』のニュースが世界中を駆け巡りました。

第一報を聞いたときは、特になんとも思いませんでした。

『リーマンブラザーズ?聞いたことはあるなぁ。それが破たん。それがどうした。』

その程度の感覚しかありませんでした。

しかし翌日の日経平均は大きく下がりました。605円安の11,609円。5%の下落でした。

市場にとってリーマン破たんは大きなサプライズだったようでした。でも5%の下落くらいならそれほど大きな痛手ではないのでは?とも思っていました。

ところが新聞やテレビの慌てようは尋常ではありませんでした。リーマンブラザーズが倒産したということの重大さが、投資初心者の私にも徐々に伝わってきました。

その深刻さが連日報道され、株価の乱高下が始まりました。翌月の10月に入ると日経平均株価の値動きがさらに激しさを増しました。

1日で日経平均が1000円下落することもありました。かと思えば、次の日には反動で900円上昇。安心もつかの間で翌日にはまた1000円下落。

リーマン破たんから1ヶ月で13,000円あった日経平均株価は8,000円にまで下がりました。

ニューヨークダウは当然下がったし、インド・中国・ブラジルなどの新興国の株価も軒並み下がりました。いずれも1ヵ月で20%を超える下げでした。

まさに暴落でした。

私が保有していた中国株で構成された『チャイナ龍翔』の基準価格も恐ろしい勢いで下がっていきました。

毎日、自分の資産が数十万円単位で消えていきました。

仕事が手につきませんでした。何をしていても日経平均株価が気になりました。

夜はなかなか寝付けませんでした。NYダウの動きが気になるからです。朝も早く目が覚めました。NYダウの終値がどうなったかが気になるからです。

NYダウ400ドル下落という結果を知り、絶望の中で会社に出勤するなんてことは日常でした。昼休みに携帯で日経平均を確認すると500円下落し、絶望しました。

地獄です。悪い夢を見ているのではないかという感覚です。

とにかく悔やむしかありませんでした。どうして自分はこの時期に投資信託になんか手を出してしまったのかと。

2008年4月に基準価格7,000円程度で購入した『チャイナ龍翔』はリーマンショック後の2008年10月に2,500円にまで下がりました。500万円の投資額が178万円になりました。

泣きたかったです。でも涙なんか出ないんですよね。救いようのないショックな出来事が起きた時、人は涙なんか出ないのです。

私を支配していた感情は恐怖でした。投資信託をそのまま持ち続けることが怖かったのです。投資し続けるという行為が怖くなったのです。

そして私は逃げることにしました。市場から逃げることにしたのです。

私は、チャイナ龍翔を売り払いました。322万円の損失が確定しました。

自分がこんな不幸に見舞われる日が訪れるなどとは思ってもいませんでした。コツコツ貯めてきた虎の子の貯金だったのに。

リーマンショックは私から322万円を奪っていったのです。

そして私は市場と決別することを決心しました。

あれから月日が経ちました。現在は年金が出るまでの間、時給900円のアルバイトを頑張っています。

時給900円は安いかもしれませんが、投資と違ってお金を奪われることはありません。

一日5時間働けば、資産が確実に4,500円増えるのです。こんなに有難いことはありません。

 

中国に賭ける危うさ

【ファイナンシャルプランナー浅野】

 

中国の経済成長が鈍化したと言っても、日本に比べると経済成長率はまだまだ高い水準にあります。

 

【日本と中国の経済成長率の推移】

日本 中国
 2010  4.19%  10.60%
 2011  -0.12%  9.50%
 2012  2.50%  7.90%
 2013  2.00%  7.80%
 2014  0.34%  7.30%
 2015  1.11%  6.90%
 2016  1.03%  6.70%

 

中国の経済成長はまだまだ止まっていません。しかしこの数値を見て中国相場を盛り込んだ投資信託を購入するというのはあまりに短絡的です。

同じ期間における中国の代表的な株価指数であるハンセン指数の推移を見てみます。

 

【ハンセン指数の推移】

ハンセン指数
 2010 23,035
 2011 18,434
 2012 22,656
 2013 23,306
 2014  23,605
 2015  21,914
 2016  22,000

 

ハンセン指数はほぼ横ばいであり、高い経済成長率と全く相関関係がないことがよく分かります。

われわれ投資家は経済成長率の上昇でもうけることはできません。相場の変動があって初めてもうけを出すことができます。中国の経済がどんなに発展したとしても、中国の株価が上がらなければ『チャイナ龍翔』の基準価格は上がりません。

これは中国に限ったことではなく、インド、ベトナム、インドネシアといった発展途上国の株を扱った投資信託にも同じことが言えます。

中国の株価も日経平均と同じで、NYダウが上がる局面では上がり、NYダウが下がる局面では下がります。

さらに中国は不動産バブルが膨らみ続けており、いずれはじけることが確実視されています。土地の価格が暴落すると不動産を所有する企業は不動産評価の特別損失を計上する必要があり、赤字に転落します。その結果、株価が下がります。

中国株が暴落すればチャイナ龍翔などの投資信託の基準価格も暴落します。中国に賭けたい場合は少額にとどめておくことです。