(tomo 39歳 男性 会社員 千葉県)

 

私が投資を初めたのは2007年(平成19年)の夏の終わり頃でした。

カブドットコム証券でひとつの投資信託を購入しました。素人投資家の私はいきなり株に手を出すのが怖かったのです。

投資信託であれば数多くの債券や株式やらが盛り込まれていて、株券のように紙くず同然になることはまずないと聞いたことが理由です。

さらにその投資信託には毎月50円の分配金が付くというのも魅力でした。

私はその投資信託を1000万円分、660口を購入しました。毎月33,000円の分配金がもらえるようになりました。

株より安定していて、リスクが少なくて、そのうえ毎月お金がもらえる。投資信託を選択しない理由はありませんでした。

そのころ、日本では投資信託が大ブームでした。ハイリスクハイリターンのFXはまだ認知されはじめたばかりで、投資初心者にはあまり浸透していませんでした。

毎月33,000円なら年間396,000円です。こんなにおいしいものをもっと早くから始めなかった自分は随分と損をしたと思っていました。

「お金がお金を生むというのはこういうことなんだな」などと考えて資産家気分に浸っていました。

ところが、です。

その年の暮れが押しせまる頃、アメリカから意味の分からないニュースが飛び込んできました。

「アメリカのサブプライムローンが立ち行かなくなりつつあります。」

サブプライムローン・・・。

なんだそれ。

よくニュースを聞くと、アメリカの低所得者向けの住宅ローンとのこと。

最初は「それがどうした」ってなもんでした。

ところがサブプライムローン破たんのニュースは毎日のように経済ニュースで耳にするようになりました。

エコノミストの説明によると、サブプライムローンは証券化(?)をされていろんな投資信託に細分化されて盛り込まれており、世界中にまき散らされているというではありませんか。

しかし、私がカブドットコム証券で購入した1000万円分の投資信託はアメリカと日本の株式、そして日本の債券のみでした。

サブプライムローン破たんのニュースは私には関係ないことだと高をくくっていました。

ところが。

徐々に市場の様子がおかしくなっていきました。

サブプライムローンがあまりにも分かりにくく細分化されて各種の投資信託に紛れ込んでいるため、影響がどこまで及ぶか未知数だという論調が支配していったのです。

それによって世界中の投資家たちが、投資から手を引き始めたのです。それによってありとあらゆる投資信託の基準価格が下がり始めたのです。

例に漏れず、私の投資信託も下がり始めました。

「その時点ですぐに売れば良かったじゃないか。」と言われるかもしれません。

しかし、その時はまだサブプライムローンの問題がそれほど長期化するとは思っていなかったのです。

「一ヵ月もすれば落ち着いてまた元に戻るだろう。」

信じられないと思われるでしょうが、当時の私は本気でそう思っていたのです。

ところが。

15,000円で購入した私の投資信託の基準価格は1ヵ月後には11,800円にまで下がりました。

その時点がわたしの我慢の限界でした。

私は投資信託を売り払い、213万円の損失が確定しました。

分配金を3度貰っていましたので99,000円の収入を差し引くと203万円の損失です。

リスクが少ない上に毎月分配がもらえるという甘い言葉を信用した自分が悪かったのです。

いくら分配をもらっても基準価格が下がればすべて水の泡です。

ただひとつ良かったことは、私はこの時点で市場から足を洗ったので1年後に起きるリーマンショックには巻き込まれなかったということです。

若いころに投資の恐ろしさを知れて良かったと、思うようにしています。

 

分配金のある投資信託は得ではない

【ファイナンシャルプランナー浅野】

 

投資信託の中には毎月分配金が出ることを売りにしている商品がたくさんあります。分配金のことは株にならって配当金と言ったりもします。

有名なものに「グ配当」という商品があります。大和住銀投信投資顧問が出している「グローバル好配当株オープン」という商品の略称です。

「高配当」ではなく「好配当」ですから、必ずしも「高い配当」を保証している商品ではないということには注意する必要があります。

しかし、かつては毎月60円の分配金を出していました。1口に対して60円ということは、1千万円分の投資信託を購入しておけば毎月6万円が手に入ったということです。

ところがリーマンショックによって分配金は下がり、一時は10円にまで下がりました。これでは1千万円分の投信を持っていたとしても毎月1万円しかもらえません。

分配金の額は投資信託の販売者によってどうにでも変更されますので、期待を寄せすぎるとがっかりさせられることがあります。

分配金はその投資信託の運用益と運用資産そのものを切り崩して捻出されます。つまり分配金のない投資信託を購入し、毎月、一定の口数を解約していくのとほとんど同じことです。

分配金ありの投資信託のメリットが皆無というわけではありません。それは相場が大きく下落したときです。

相場が下がって投資信託の基準価格が大きく下がったとき、分配金ありの投資信託であれば既に手に入れた分配金までは持っていかれません。

しかしそれよりも大きな分配金ありの投資信託のメリットがあります。それは、毎月通帳口座にお金が入金されるという楽しみを与えてくれるということです。「あぁ、自分は不労所得を得ているなぁ」と実感させてもらえます。

しかしこれがまた分配金ありの投資信託の怖さでもあります。

素人投資家たちの多くはどれだけ基準価格が下がっても「毎月お金が入って来るから我慢しよう」という思考回路になってしまいがちです。このために投資信託を長年塩漬けにしてしまっている熟年層がたくさんいます。

定年を迎えた人たちは、毎月お金が入ってくるということを有難く感じる傾向にあります。年金は2カ月に一度しか振り込まれませんが、投資信託の分配金は毎月振り込まれます。

分配金ありの投資信託が熟年層に人気であるのはこのためです。

しかし投資信託の本分は基準価格の値上がりによってもうけを出すことです。その投信の構成内容に将来性がないと判断すれば売却し、今後成長の見込める投資信託を探し出すという嗅覚を鍛えることのほうが、投資家としては重要なことです。