(M 57歳 男性 自営業 茨城県)

 

私はこれまでの投資人生で3000万円以上を失いました。

これは紛れもない事実であり、証券会社には私の損失の歴史が全て記録されていることでしょう。

証券会社にしてみれば私のような零細投資家はそれほど目立たない存在だろうし、私なんかより巨額の損失を出している人は五万といるのかもしれません。

でも私にとって3000万円は巨額です。これだけあれば10年以上は生活ができるという額です。

それだけの額を誰にも知られることなく失っていったのです。

私ももうすぐ還暦です。最近はこの喪失感をいつまでも引きずっていてはいけないと思うようになりました。

今、私はこう思うようにしています。

「詐欺にひっかかって3000万円を騙し取られたとしたらくやしいだろう。しかし私は全て自分の判断のもとで投資をしたことによって失った。誰かに騙されたワケではないし、泥棒の被害に遭ったわけでもない。」

もし今の私の状況が他人のせいによってもたらされたものだとしたら、裁判を起こして名誉と財産を取り戻さなければ死ぬに死ねません。

しかし、投資による損失はすべて自分に責任があります。すべてが自分の責任なので仕方がないと思うのです。

誰を責めるわけにもいきません。責めるべきは自分自身なのですが、自分をいくら責めてみても刑事罰にも民事罰にも問われません。

投資でお金を失うということは、そういうことなんだと思います。

全てが自分ひとりの中で完結している話なのです。特に私の場合、誰かに投資を勧められたわけではなく自分がやりたいからやったのです。

私は人知れず、3000万円を失っただけです。身内にも、友人にも知られていません。その事実を知っているのは私自身だけなのです。

3000万円を失う前の自分と、3000万円を失った今の自分。見た目は何も変わりません。だから誰もそのことに気付きません。

投資でお金を失うということは、ほんとうに孤独なものです。

誰も一緒にくやしがってくれません。愚痴を聞いてくれる人もいません。慰めてくれる人もいません。

友人と連れ立ってカジノに行って大損をしたのなら、みんなが慰めてくれるかもしれません。勝った奴がお情けで晩飯を奢ってくれるかもしれません。

でも投資は孤独です。

私は最初に株を買った時から、誰にもそのことを話したことがありません。株や投資信託をやっているという行為がいやらしくて恥ずかしい行為だという意識があるからです。

そのことだけは良かったと思います。

株や投資信託をやっていることをみんなに言っていたとしたら、リーマンショクが起きた時に憐みの目で見られたに違いありません。「お前、確か投資信託を大量に保有してたよな。大丈夫か。」などと憐れまれたと思います。

内緒にしていてよかったと本当に思います。それだけは救いでした。

3000万円を失ったうえに世間から憐みの目で見られるなんて地獄ですからね。

「株で儲けたという話は聞くが、株で損したという話は聞かない」などという俗説がありますが、私にはよくわかります。

儲ければ人に言いたくて仕方がないと思います。しかし、損をしたらこれほど恥ずかしいことはありません。絶対にバレたくないもんです。

投資で損をし続けると、悔しさ、はがゆさ、恥ずかしさ、虚しさといった感情が自分を襲い、やがてそれが当たり前となり慣れていきます。

でもそれは全て、自分に対しての感情。誰かに責任を求めることはできません。

投資で大損をする経験をすることで自分の愚かさを見つめ、残りの人生は謙虚に生きていけということなのかもしれません。

 

大損をしている最中に、大損の武勇伝を語る人はいない

【ファイナンシャルプランナー浅野】

 

もしかするとあなたの回りに、「株で1000万円損した」「FXで500万円溶かした」などといった、大損の武勇伝を語る人がいるかもしれません。

しかしそういった武勇伝を語れるということは、既にその損失を取り返しているか、もしくはそれを痛手に感じていない可能性があります。

何百万、何千万という損をしたということは、裏を返せばそれ以上の貯金を持っていたという自慢にもなります。

「何千万円も損をしたけど俺は平気だ」と語ることで、器の大きい人間だと思わせることもできます。

しかし、自分の許容量を超える大損をしている最中の人は、決してそのことを口外しないものです。自分の年収よりも大きな額、もしくは自分の貯金の半分以上の額の含み損が発生している事実を、笑いながら話せる人などいません。

したがって、世の中に投資で大損をしているのは自分だけなのではないかという気になるものです。

しかし心配はご無用です。数百万円単位で含み損を抱えている人はいくらでも存在します。

野村證券が2015年に個人投資家1000人にアンケートを取った結果、これまでの投資人生において利益が出ている個人投資家は全体の9.3%しか存在しないことが分かりました。

残りの投資家のうち、29.1%がプラマイゼロ。損失もしくは含み損が出ている状態の人が61.6%という結果になりました。

自分が大損をしている時というのは、「これだけ大きな損失を出しているのは世の中で自分ひとりだけで、自分以外の投資家はみんな賢くて利益を出しているのだろう。」などと考えがちです。

しかしあなたがそうであるように、大損をしている真っただ中であることを背中に書いて外を歩く人はいません。

投資で損をするということは孤独なものです。