(よっくん 36歳 男性 会社員 愛知県)

 

わたしはずっと、30歳までに1000万円を貯めるのが目標でした。

そのために安い家賃のアパートを選び、車は中古のアルトで我慢してきました。

少ない給料ながら毎年130万円を目標に貯金をしてきました。

その甲斐あって、昨年の35歳の誕生日までには1500万円まで貯金を増やすことができました。

一応正社員として働いてきましたが、35歳になっても役職はつかず、給料は安く、入社以来ほとんど年収が上がっていませんでした。

貯金額を増やすことだけが生きがいの私は、もっと早いペースで貯金を増やせないものかと画策していました。

書店でマネー雑誌を買い込んで、読み漁りました。それらの雑誌には、株・投資信託・FX・バイナリーオプション・金・先物取引といった、さまざまな種類の投資情報が掲載されていました。

その中で私にも分かりやすく、リターンが大きいと感じたのがFXでした。

「どの通貨を買うか」。考えることはそれだけでいいというのが魅力でした。

しかも手持ちのお金の25倍までの取引ができるというのも大きな魅力でした。

株式の2階建ての信用取引などに手を出して失敗すれば、種銭がゼロになるだけでなく借金地獄です。その点、FXは倍率が25倍であるにも関わらず、種銭がなくなる前に強制的にロスカットしてくれます。

だからFXはリスクが低いのにリターンが大きい投資だと思えたのです。(世の中にローリスクハイリターンなどという投資先があるわけないのですが。)

一気に貯金を増やしたかった私は、迷わず25倍を選択し、1500万円を投入してドルを購入しました。

1500万円の25倍なので、3億7500万円の取引でした。

億を超えるお金を動かしていることに酔っていました。

ドルが1円高くなれば300万円以上の利益が発生し、ドルが0.5円上がっただけでも150万円以上の利益が発生するという計算ばかりしていました。

それから毎日、会社から帰ってFXの画面を開くのが楽しみで仕方がありませんでした。

2日後には10万円のプラスが発生していました。私の予想通り円安に動いたのでした。

ところが。

3日目から事態は急変しました。

一転して為替レートが円高ドル安に進み出し、あっという間に100万円を超えるマイナスとなりました。

しかし私は損切りすることができず、しばらく様子を見ることにしました。

円高ドル安はどんどん進行し、やがて収支がマイナス500万円を超えたところで、私はドルを売り払いました。

ケチケチした生活をして貯めてきた虎の子の1500万円が1週間で1000万円になってしまいました。

私は、自分の税込み年収額以上の金額を、1週間でドブに捨ててしまったのです。

それで辞めておくべきでした。500万円は高い授業料だったと、あきらめておくべきだったのです。

しかし、そこから私は一発逆転を狙いにいってしまったのです。

その次の週の金曜日にアメリカが雇用統計を発表することが決まっていました。

私はアメリカの雇用統計が悪化すると読み、今度は円を1000万円で購入しました。

ところが、雇用統計はエコノミストの予想に反して大きく改善したのです。

ドルは2円近くの急上昇です。

メールに取引強制終了の通知が届きました。1000万円が500万円になりました。

前週の500万の大損に続き、新たに500万円を失ったのでした。

私は13年かけて貯めてきた1500万円を、たったの2週間で500万円にまで溶かしてしまったのです。

私にはもう、FXに参戦する勇気は残っていませんでした。これ以上続けたら、私の貯金は限りなくゼロに近づくことが容易に想像できました。

FX口座は解約し、残った500万円をすぐに銀行の定期預金に預け入れました。

1000万円を失った直後、「死にたい」という気持ちが何度も浮かんでは消えていきました。

そう考えるたびに「まだ500万円ある」「仕事だってある」と、自分をなだめました。

あれから一年たった今、死ぬほどのことではないとの結論に達しました。

私は犯罪を犯したわけでも、サラ金に借金をしたわけではありません。

ただ、1000万円をFXで溶かしただけなのです。

1000万円でフェラーリを購入し、自損事故を起こして廃車にしたのだと思うようにしています。

 

コツコツ貯金をしている人ほどハイリスクな投資に惹かれる

【ファイナンシャルプランナー浅野】

 

散財せずに貯金ばかりしている人を見ると、「何が楽しくて生きているんだろう」と思ってしまいます。しかし、本人からすると貯金をすることが人生の喜びとなっているので、楽しくて仕方がないのです。

「貯金が趣味の人はきっと堅実な性格なんだろう」と思いがちですが、案外そうでもありません。

人より早くお金を貯めたいという欲求が強いので、お金を運用する段階になるとハイリスクの商品に手を出しやすい傾向があるのです。

高配当の金融商品をエサに何十億円というお金を集めた組織が出資法違反で逮捕される、という事件が数年に一度のペースで発生します。このような詐欺事件の被害者になってしまう人は、ある程度お金を持っていて、さらにお金を増やしたいという欲求が強い人たちです。

お金を持っていなければそもそも詐欺にひっかかりようがありません。お金を持っていたとしても、働いて稼ぐ金額以上にお金を増やしたいという欲求がなければ投資話に興味を持たないでしょう。

つまり、お金を貯めることに関して欲深い人は、投資先を選ぶ際にもハイリスクな商品を選んでしまう傾向にあるといえます。

銀行の定期預金に預けていてもスズメの涙ほどしか金利がつかないこの時代に、高い利回りを目指すためには元本が保証されていない(=損をするかもしれない)投資先を選択するしかありません。

お金を貯めることに執着のある人は、他人が年間10%の利回りを達成していると聞くと、自分は20%の利回りを目指してやるぞという対抗心を持ってしまうのです。

投資はもうけを大きくしようとすると失敗します。もうけはそこそこで我慢する代わりに、損失を極限まで少なくするという発想を持つことのほうが重要です。